'04 December ●フレンチポップスブーム?
僕にはあまり印象がなかったが、60年代に日本でもほんのちょっとだけフレンチポップスが流行った時期があった。思うに、それはアメリカやイギリスからポップスが輸入されたのと同じ時期に同じようにフランスからも「洋楽」を仕入れてみたといったかんじのものだったんだろう。でも、その後フレンチポップスはいつの間にかひとつのジャンルにすぎなくなってしまった。
ポップソングがほとんど世界中でアメリカとイギリスの、またはそれ風なものに決定されてしまったのは、世界が大きく変わった時代と同時に生まれた新しいポップカルチャーが席捲したことが最大の要因だが、フランスがそれに乗り遅れてしまったのは、フランスのポップスそれ自体が魅力あるものに発展しなかったこととROCKが育たなかったことが理由なのだと思う。

ところが、この2004年の秋の日本でフレンチポップスがあちらこちらで聞こえてくるのだ。
イーオンのカシミヤのCMではシルヴィ・ヴァルタンの「アイドルを探せ」、ANA新羽田ターミナルのCMでは同じシルヴィ・ヴァルタンの「あなたのとりこ」がCMソングになっている。
どちらも60年代に流行ったお馴染みの歌だが、なぜ今?と思って考えてみると始まりは映画『ウォーターボーイズ』なのではないかと思うのだ。大ヒットしたこの映画で、映画の内容とは直接関係ないが「あなたのとりこ」が効果的に使われ、初めてまたは久しぶりに聴く人の耳に新鮮に届いたのではないか。つまりはそれだけのことなのではないかと。
とはいっても、いいところに目をつけたと思う。フレンチポップスはフランスのアイドルが歌う歌謡曲なので、親しみやすくて明るくて楽しくて甘くてかわいい雰囲気が満載だ。CMソングとしては効果大だろう。

東京ガスのCMで使われているフランソワーズ・アルディはアイドルとは少し違うが、ため息のような声のアンニュイな雰囲気で日本でも人気が高い。フランスのポップス(シャンソンではなく)を愛好する人のイメージはむしろこっちの方だろう。ジェーン・バーキンやブリジット・バルドーなどのゲーンズブール一派(?)もこのタイプだ。
僕も学生の頃、おフランス好きの女の子にさんざん聴かされた。カフェオレをボウルで飲みながら煙草を吸ってフランソワーズ・アルディを聴くというわけだ。そんな”フランス嗜好”は今もあるんだろうな、きっと。

ポピュラーミュージック不毛の地とさえいわれていた、そして現在進行形で何が起こっているかは依然としてあまり情報がないままだが、とにかく、ナツメロだろうが、久しぶりに日の目を見たフレンチポップスなのだ。しばし、雰囲気を楽しんでみることにしよう。

Sylvie Valtan





Francoise Hardy


France Gall
France Gall/フランス・ギャル
シルヴィー・ヴァルタンと双璧をなすヒットメイカーで世界的なアイドルとなったフランス・ギャル。「夢見るシャンソン人形」が1965年に大ヒット。それにしてもフランス・ギャルとは!日本でいうと大和撫子とでもいうところか。

Brigitte Fontaine
Brigitte Fontaine/ブリジット・フォンティーヌ
フレンチポップスがアイドルの歌謡曲と言ったが、フランスにアーティスティックな音楽が無いかといえば、もちろんそんなことはない。ブルジット・フォンティーヌはアート・アンサンブル・オブ・シカゴといったフリージャズのアーチストとの競演や、パートナーのアレスキとともに非常に前衛的な音楽を長年にわたり作りつづけている。その詩の内容は古いシャンソンにも通じる暗さと不気味さがあり、また違った意味でフランス的なものを強く感じさせる。

Pierre Barouh
Pierre Barouh/ピエール・バルー
映画「男と女」のアヌーク・エメの死んでしまった夫といえば思い出す人も多いだろう。フランシス・レイと親交があり、主題歌の作詞も手掛ける。もともと作詞・作曲家/歌手/ギタリストであったバルーだが、ブラジルに深く傾倒し、ボサノヴァをソフィスティケイトした「フレンチ・ボサ」というジャンルを築いた。

Serge Gainsbourg
Serge Gainsbourg/セルジュ・ゲーンズブール
シンガー/コンポーザー/俳優/映画監督とマルチに才能を発揮したフランスの異端児セルジュ・ゲンスブール。自身の音楽活動も評価を得ていたが、はじめにヒットを記録したのは他人に提供した曲だった。フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」も彼の曲だ。
ブリジット・バルドーと録音し、いったんはお蔵入りとなった「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」を後の妻ジェーン・バーキンと改めて録音。その内容の過激さで一度は放送禁止となるが、69年にNo.1ヒットを記録。
セクシーでアンニュイなスタイルを作り上げた、フランスショービズ界のドンだ。91年没。

【BACK NUMBER】

●TVから'70の風が吹いてくる('04 May)
●トータス松本の『TRAVELLER』を聴こう!('04 June)
●破壊と再構築-AEROSMITH『HONKIN' ON BO BO』 ('04 July)
●Summertime あれこれ ('04 August)
●CMが'文化'だった頃・・資生堂『音椿』('04 September)
●これぞお祭り音楽-Black Bottom Brass Band('04 October)
●美空ひばり JAZZを歌う('04 November)
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