'04 July ●破壊と再構築-AEROSMITH 『HONKIN' ON BOBO』

AEROSMITH
『HONKIN' ON BOBO』

SONY MUSIC (2004/3/31)
SICP-565
コカコーラの新商品「C2」中田英寿も登場の新CMの曲は、エアロスミスの「You Gotta Move」。今回はこの曲が収録されているエアロスミスの新譜『HONKIN' ON BOBO』を紹介しよう。
このアルバムは形態こそ昨今流行(?)の「ブルースのカヴァーアルバム」であるがその中味といえば、先月とりあげた、オリジナルに迫ろうという気迫溢れるトータス松本の『TRAVELLER』や、ほぼ同時期にリリースされたエリック・クラプトンのロバート・ジョンソンのカヴァーアルバム『Me And Mr.Johnson』とは少しばかり異質なものなんじゃないかと僕は思う。

コカコーラC2のCMソング「You Gotta Move」はロックファンにはローリング・ストーンズヴァージョンで馴染み深いだろう。でもテレビから流れるCMで耳にしただけでは同じ曲とはすぐにはわからなかったんじゃないだろうか。だけどエアロスミスの曲であることはすぐにわかったはずだ。
そう、『HONKIN' ON BOBO』はそんなアルバムなのだ。

これはまさにエアロスミスの「新作」だ。いわゆる「カヴァー集」とは少し違う。
もちろん、とりあげた曲(F.マクダウェルの曲が3曲も!)やジョニー・ジョンソンを迎えていることをみても彼らのブルースへのリスペクトはとても強いと思う。でもこのアルバムから感じられるのは「自らのルーツへのあくなき探究心」ではなく、かっこいい曲だから演りたいだけだと言わんばかりの勢いだ。これには圧倒される。ブルースを破壊し再構築し、新しいエアロスミスの「新曲」が生まれた、そんなことさえ感じさせる。
かっこいいロックンロールアルバムだ。

01.Road Runner
ワン・アンド・オンリー、ボー・ビートを生み出したボ・ディドリーの代表的な曲。
それにしてもこの曲の出だしはどうだ。文句なくかっこいい。素晴らしいロックンロールナンバーに仕上がっている。次のライブでは是非ともオープニング曲にして欲しい。
02.Shame,Shame,Shame
原曲はニューオリンズのR&Bシンガー、スマイリー・ルイスのジャンプ・ナンバー。
スイング・ロックっぽい、ドライブ感溢れるロックンロールになっている。ピアノを弾いているのはジョニー・ジョンソン。チャック・ベリーのピアニストでもあり、キース・リチャーズが参加したアルバム(「Johnnie B Bad」)もある。
03.Eyesight To The Blind
ブルース・ハーピスト、サニー・ボーイ・ウィリアムソンUの曲。ブルース・ロックナンバー。
04.Baby,Please Don't Go
ブルースのスタンダードともいえるほど多くのミュージシャンが演奏している曲。ビッグ・ジョー・ウィリアムスが原曲だが、彼らの頭の中にはゼム(ヴァン・モリソンが在籍していたブルティッシュロックグループ)のヴァージョンがあったのか?このアレンジはどうみてもブリティッシュ・ロックだ。
05.Never Loved A Girl
クイーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンの大ヒットナンバー。原曲のタイトルは「I Never Loved A Man(The Way I Love You)」
この名曲をここまで歌いあげるスティーブン・タイラーのヴォーカルの実力を見せつけられた。
06.Back Back Train
ミシシッピのカントリーブルースマン、ミシシッピ・フレッド・マクダウェルの曲。ジョー・ペリーがヴォーカルをとっている。ヘヴィーなナンバー。
07.You Gotta Move
ミシシッピ・フレッド・マクダウェルが何度も録音して知られるところとなった曲。で、そのマクダウェル自身はこの曲をローリング・ストーンズがカヴァーしたことによって広く知られるようになった。
ストーンズバージョンがスローな泥臭いブルースナンバーであるのに対して、エアロスミス・バージョンは紛れもないROCK。しかもアップテンポのボー・ビート!恐れ入った。
08.The Grind
オリジナル曲。
09.I'm Ready
ウィリー・ディクソン作、マディ・ウォーターズが54年に録音、ヒットさせた曲。
ハンブルパイ、ポール・ロジャースといったエアロスミスが影響を受けたというイギリスのロック・ミュージシャンも数多くカヴァーしている。ブルース・ロックナンバー。
10.Temperature
ブルース・ハーピスト、リトル・ウォルターの曲。スティーブン・タイラーのハープもなかなかのものだ。
11.Stop Messin' Around
フリートウッドマックの初期がブルースバンドだったことを知っている人は少なくなっただろう。この曲はその頃の代表曲。ジョー・ペリーは以前から好んでライブで歌っていた。
12.Jesus Is On The Main Line
古いゴスペル。ライ・クーダーなど多くのミュージシャンがカヴァーしている。ジョー・ペリーのドブロでのスライドとゴスペル・クワイヤを思わせる女性コーラスでスピリチュアルな雰囲気だ。

【BACK NUMBER】

●TVから'70の風が吹いてくる('04 May)
●トータス松本の『TRAVELLER』を聴こう!('04 June)
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